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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)890号 判決 1969年2月25日

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し

(1)金二五、三〇二円に対する昭和三七年一二月一日から、金二五、三二四円に対する同年同月一六日からそれぞれ昭和四〇年八月一日まで、

(2)金三一一、二六五円およびこれに対する内金五、二七八円については昭和四〇年八月二日から、内金一二、一九四円については昭和三七年一二月二八日から、内金一六、七八四円について昭和三八年二月一日から、内金一五、九三九円については同年三月一日から、内金一三、三七八円については同年三月一六日から、内金三、六九七円については同年三月三一日から、内金六、六八九円については同年四月一九日から、内金四五一円については同年五月一日から、内金三、〇七八円については同年六月一日から、内金一、三八四円については同年六月二九日から、内金一、〇五九円については同年八月一日から、内金五一、六〇三円については同年八月一三日から、内金四、七九七円については同年八月三一日から、内金五、九四〇円については同年一〇月一日から、内金二九、六二四円については同年一一月二八日から、内金四、三八七円については同年一一月一日から、内金一四、八一二円については同年一二月一八日から、内金一四、三三四円については同年一二月二五日から、内金三、〇九二円については同年一二月一日から、内金一四、八一二円については昭和三九年二月一日から、内金一四、八一二円については同年三月一日から、内金一三、八五六円については同年三月二八日から、内金二、四一六円については昭和三八年一二月二八日から、内金四、九五一円については昭和三九年二月一日から、内金二、七一四円については同年三月四日から、内金六、九二五円については同年三月三一日から、内金二、二四七円については同年五月一日から、内金一一、九四五円については同年五月一三日から、内金三、二二一円については同年五月三〇日から、内金一〇、五一二円については同年七月一一日から、内金一四、三三四円については昭和四〇年三月三〇日から、それぞれ支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一、二審を通じ控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、適式の呼び出しを受けながら、当審における最初になすべき口頭弁論期日に出頭せず、よつて、陳述したものとみなされた控訴状の記載によると、控訴人の控訴の趣旨は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」というのである。被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の提出、援用及び認否は、次のとおり付加するほか原判決の事実摘示と同一であるからその記載を引用する。

一  控訴代理人は、被控訴人が本件債権についてした納入告知により消滅時効は中断したとしても、その後再び三年の時効が進行し、原判決添付保険給付関係一覧表記載の1ないし22、24、26、28の債権については、本件支払命令の申立てがなされた昭和四二年八月一五日までには、すでに消滅時効が完成している。と述べ、

二  被控訴代理人は、

(一)被控訴人は控訴人に対し本件請求債権について―原判決添付一覧表記載1ないし22、24、26、28を含め―右一覧表納入告知年月日欄に記載の年月日に、同表求償額欄に記載の金員を納入されたい旨、それぞれ納入告知書をもつて告知しこれらの告知はいずれもその告知年月日の翌日ごろ控訴人に到達したから会計法三二条の規定により消滅時効は中断された。

(二)右中断の時点から、さらに時効が進行したとしても、控訴人は、昭和四二年八月三〇日夫権宅〓を代理人として被控訴人の指定代理人柏原光雄に対し本件債務を支払う旨述べて、時効の利益を放棄した。

と述べた。

理由

当裁判所の本件についてする事実の認定及びこれに基づく判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決がその理由として説示するところ(原判決一〇枚目表七行目から同一四枚目裏二行目まで)と同一であるから、これを引用する。

一  原判決添付保険給付関係一覧表中、番号10の保険給付年月日及び納入期限欄に「四、一六」とあるのをそれぞれ「四、一八」と改める。

したがつて、遅延損害金算定期間は、「自三八、四、一九」となる。

二  原判決一四枚目表二行目ないし三行目「消滅時効が中断するに至つたものというべきである。」とある後に、「控訴人が本訴請求債権についてした納入告知により中断した消滅時効は、原判決添付一覧表記載1ないし22、24、26、28の各債権については、納入告知後さらに三年の経過により完成したと主張し、控訴人の挙げる右債権について、納人告知後昭和四二年八月一五日までに三年余の期間の存することは明らかである。しかしながら、成立に争いのない甲第四九号証、原審における証人座光寺要、同柏原光雄、同権宅〓(一部)、控訴人本人の各供述によれば、控訴人の夫権宅〓は、控訴人の代理人として、昭和四二年八月三〇日柏原光雄に対し、前記控訴人の各債務につき消滅時効の完成したことを知りながら、右債務の存することを確認し、分割払いにしてほしいと申し出たことが認められ(原審証人権宅〓の供述中右認定に反する部分は採用しない。)、当時柏原光雄が本件債権につき被控訴人を代理する権限を有したことは、記録上明らかであるから、控訴人は被控訴人に対し時効の利益を放棄したものであるといわなければならない。控訴人は、当時権宅〓が時効の完成を知らなかつたと云い、また本件債務全部を承認したのではないと争うが、そのような事実を認め難いことは、すでに判示したところから明らかである。控訴人は、さらに、訴提起後の債務の承認は時効の援用権を失わせるものでないと解すべきであると主張するが、独自の見解であつて採るをえない。控訴人は、最後に、権宅が〓当時鬼頭兼男に対する債務と被控訴人に対する債務とのうち控訴人の責任を負うべき債務が「どちらか一方にきまればそれを支払う。」と表示したとして要素の錯誤を主張するが、当時権がそのような趣旨の発言をしたことは当裁判所の認めないところであるから、右の主張は、その前提において失当である。

してみれば、被控訴人の本訴請求は、原判決添付一覧表番号10の休業補償六、六八九円に対し昭和三八年四月一七、一八両日分として年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分を除き、正当であるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却すべきであり、右と結論を異にする原判決は変更を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九二条但書、九六条を適用して主文のとおり判決する。

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